不思議のメダイの聖母の聖堂。
1830年。
シスターカタリナが聖母マリアのお告げを受けてメダルを作る。
2年後、パリでコレラが流行。
メダルを配るとコレラが激減した。
奇跡のメダルは世界に広まり、今も世界中から観光客が訪れている。
教会の隣。メダル売り場。
日本人の女性が4人、スタッフに何か言われている。
「えっ、なに?」
「わかんない。」
「こわいんだけど。」
「どうすればいいの?」
店の真ん中で固まってしまった。
何を言われているのかわからないみたいだ。
女性スタッフの表情と声から、状況を読み取ってみる。
ペンダントトップ用のメダルが5~6個入った透明な袋。
日本人が複数を手に持って話している。
ショップ内が混んできて、全員の手の中まで目が届かない。
ポケットやハンドバッグに入れられてもわからない状態になった。
声をかけてみよう。
「そろそろお支払いしていただけませんか? レジはあちらです。」
フランス語わからないのね。
英語で言ってみよう。
えっ? 英語もわからないの?
あの、「そろそろレジで精算して下さい。」って言ってますよ。
「あっ。日本語!」
「助かった。嬉しい!」
「フランス語わからなくて怖かったんです。」
「そうなんですね。ありがとうございます!」
英語だけどな。
4人をレジに誘導して、スタッフに会釈。
「Merci.」
微笑んでくれた。
彼女達からユーロ紙幣を受け取ったレジのおばあちゃん。
僕を手招きしてる。
「日本人に何て言えばいいの? こういう時。」
こういう時?
「観光で来てメダルを買ってくれた日本人にね、何か言いたいのよ。」
ありがとう。ですかね。
「ありがとう。は知ってるのよ。Thank you. とか Merci.でしょ。
その後に何か一言。付け加えられたらいいと思ってね。」
いい人だな。
ありがとう。で充分伝わりますよ。その優しさ。
でも、もう一言付け足したいんですよね。その気持ちに応えたい。
「ありがとう。〇〇〇〇〇。」
何がいいのかな。
「またのお越しをお待ちしております。」
料亭か。
長過ぎる。
また来れる人は、少ないしな。
エッフェル搭も凱旋門も2回は登らないだろうし、
ルーブルもオルセーも一生に1度の思い出だ。
どうしようかな。
そうだ。これがいいかも。
お気をつけて。がいいと思います。相手の無事を願う言葉。日本語です。
「書いて。」
メモ用紙とボールペンを差し出された。
OKIWO TSUKETE.
書いて渡した。
「オ キ ヲ ツ ケ テ。 オキヲ ツケテ。」
いいですね。お上手です。
「アリガト ゴザイマス。オキヲ ツケテ。」
微笑んでくれた。
こちらこそ、ありがとうございます。
日本人への優しいお心遣い。感謝します。
幸福を呼ぶ奇跡のメダル。さっそく、ご利益いただきました。
あなたに神のご加護がありますように。
(2013年 49歳)
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