障害者になって気付く「未来のためにできること。」

エッセイ

マンションの部屋から、小学校が見える。
今朝も色とりどりのランドセルが歩いて行く。
若いっていいな。と思うけれど、羨ましくはない。
これから、大変だよ。

もし魔法使いが現れて「7歳に戻してあげようか?」と言われても、
丁重にお断りさせていただきます。

僕らが子供の頃。夏は、川で遊んだ。
走って、泳いで、石投げて。
飲んでもお腹が痛くなったりしない綺麗な水。
夜空はいつも天の川。
竹の箒をゆっくり動かせば絡め採れるほど蛍が飛ぶ。
蚊帳の中に放し、光が舞うのを見てるうちに眠っていた。
家で勉強なんかしない。塾もなかった。

都会の小学生は、この先、どんな人生を歩むんだろう。
こんな世の中だけど、生きにくい世の中だけど、楽しんで生きて欲しい。
彼らの未来のために、僕らができることって何だろう。

50歳を超えても危険なスポーツをする僕は、怪我は覚悟していたが、
1回の操縦ミスで障害者になった。
命が助かっただけで奇跡的らしい。

入院した病院のリハビリ室に、やたら明るい女性がいた。
平行棒の間に置いた体重計に、折れた方の足を乗せていく。
「えっと。今日、20kgですよね。痛そう。いけるかな。こわーい。」
まるでリハビリを楽しんでいるように見えるけど、横断歩道で信号無視の車に飛ばされて多重骨折。
夫と幼い子供2人を残して入院中のママは、早く家に帰ってあげたい一心で、痛くて辛いリハビリを頑張っている。
彼女の明るい笑顔は、本人が気付かないうちに、周囲を勇気づけていた。

退院して2年が経つが、僕は今も福祉スポーツ施設に通っている。
室内温水プールでの水中歩行は、リハビリと気分転換が両立できて好きだ。
車椅子用のスロープや、視覚障碍者用の柔らかい壁が設置されたプールには、いろんな人が来る。

まだ言葉を話さない5歳くらいの男の子は、パパと歩くのが大好き。
歩行レーンですれ違う時にニコっとされると、こっちが嬉しくなる。
知的障害の子の笑顔は、天使のようだ。
時々「きゃーー!」と叫ぶのは、パパと水で遊ぶのが楽しいんだよね。
いつかきっと、話せるようになるよ。そんなに愛されてるんだから。
彼のおかげで自然に笑顔になれた僕は、「ああ、これかな。」と思った。

他人のためじゃなくていい。
自分のために、残りの人生を明るく生きよう。笑って生きよう。
すれ違った人が「今のおじさん、楽しそうだったな。」って
笑顔になってもらえるように。

コメント

タイトルとURLをコピーしました